日本政府とNATOが偽情報対策に向けた新たな取り組みを発表

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2024年7月10日、北大西洋条約機構(NATO)の首脳たちは、ワシントンD.C.で開催された第75回NATO首脳会議で新たな決議を採択した。この会議では、ウクライナへの支援強化やNATOの防衛力向上に加え、日本を含むアジア太平洋地域との連携強化が議論された。特に、偽情報(Disinformation)対策における協力が重要なテーマとして浮上した。

NATOと日本政府の連携強化

今回のNATO首脳会議は、ウクライナの戦いを支援するための長期的な支援強化、抑止力と防衛力の向上に努める中で、ウクライナのゼレンスキー大統領や日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、欧州連合(EU)の各国首脳たちを会議に迎えて行われた。

NATOは声明の中で、「インド太平洋地域の発展が欧州・大西洋の安全保障に直接影響を与える」と強調し、特に、日本などのアジア太平洋地域のパートナーの安全保障への貢献を歓迎、ウクライナ支援、サイバー防衛、誤情報対策、技術分野における協力プロジェクトを通じて、地域横断的な課題に取り組む対話を強化し、実践的な協力を進めるとしている。

NATOの誤情報対策の取り組み

NATOは、敵対的な誤情報や偽情報への対応能力を個別および集団的に強化する方針を示した。加盟国やパートナーと緊密に連携し、警戒システムと情報共有メカニズムを強化し、特に戦略的コミュニケーションにおいて共同対応を強化している。

特に欧州・大西洋地域全体で増加しているロシアによるハイブリッド戦争*はNATO加盟国の安全保障に対する脅威となっており、NATOはその対応を強化する必要性を示している。

*ハイブリッド戦争 – 現実世界とインターネット双方を駆使して行われる破壊活動、暴力行為、国境での挑発、不法移民の利用、悪意のあるサイバー活動、電子干渉、誤情報キャンペーン、政治的影響力の行使、経済的強制など

日本政府の役割と誤情報対策

岸田首相は、NATO首脳会合に参加し、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との強い危機感を表明するとともに「日本国の防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組み」を進め、「GDP比2%の防衛予算の確保を目指す」と述べた。

サイバー面では、NATO-日本間での秘匿情報共有体制の強化(専用回線の設置)、NATOが実施するサイバー防衛演習への参加、戦略的コミュニケーションセンターへの要員派遣、共同訓練の実施を計画のほか、NATO及びその加盟国、IP4を招待し、戦略的コミュニケーションに関する会議を今年度中に日本で開催する予定があることを明かした。

まとめ:政府主導での偽情報の対処に期待

今回のNATO首脳会議で発表された声明は、国際社会における偽情報・誤情報対策の重要性を再認識させるものだった。特に、ロシアによるハイブリッド戦争の脅威が増す中で、誤情報対策は国際的な安全保障の一環としてますます重要視されている。

国際関係における偽情報・誤情報の脅威は欧州に限ったことではなく、筆者の感覚ではここ数年で一気に、不自然な日本語を用いたSNSアカウントが散見されるようになったと感じている。市民単位で不正確な情報を見抜くためのリテラシーを身につける事はもちろんだが、国際社会と連携した日本政府の取り組みにも期待したい。

サムネイル:
Group photo of the NATO Secretary General, Heads of State and Government with Ukraine, the Indo-Pacific Nations and the President of the United States – Washington Summit

参考:
2024-7-10. “Washington Summit Declaration”. NATO. https://www.nato.int/cps/en/natohq/official_texts_227678.htm, (参照2024-7-16)
2024-7-11. “NATO首脳会合等についての会見”. 首相官邸. https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2024/0711kaiken.html, (参照2024-7-16)

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