Opinion

誹謗中傷に晒されるアーティストたち…K-POPと”アンチ”の攻防

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世界中で愛されるK-POPアーティストたち。米国の調査会社「statisca」のレポートによると、2022年の韓国音楽業界全体の売上は約11兆ウォン(約132兆円)で、国外への輸出額は約9億2,760万ドル(約1400億円)だった。

彼らはその才能で多くのファンを魅了しているが、その一方で、「アンチ」と呼ばれる人々による誹謗中傷は年々深刻化している。特に、本来は楽しい交流の場であるはずのSNSや配信サービスが、アーティストたちを傷つける場にもなっている。

本記事では、K-POPアーティストを取り巻く誹謗中傷の現状と、主要事務所による対策について紹介していく。

K-POPアーティストとファンの接触手段

アーティストとファン、そしてアンチの接触手段は多様化している。一部の事務所ではトラブル防止のために個人アカウントの所有を禁止するなどしているが、それでもSNS上での中傷や、時には物理広告を利用した攻撃など誹謗中傷の手段は際限がない。

SNS

多くの芸能人・著名人と同じく、InstagramなどのSNSを通じてファンと交流するKPOPアイドルは多い。
事務所やグループによっては、トラブル防止の観点から個人アカウントの所有を禁止している場合もある。また、プライベートなアカウントの投稿が流出することによるトラブルも起こっている。

交流アプリ

K-POPアーティストが利用するサービスのひとつに、「Weverse」や「Bubble」といったアーティストとファンがメッセージをやり取りできるサービスがある。
これらのサービスはほとんどが課金制で、ポリシー違反をしたユーザーに対する強制退会システムもある。そのため比較的アンチが入り込みにくい構造とはなっているが、それでも誹謗中傷を目撃したというコメントは後を絶たない。

ライブ配信

前述のInstagramや交流アプリ内で行われる配信。リアルタイムでファンからのコメントが流れるため、アーティストとファンがリアルタイムでコミュニケーションが取れる利点がある一方、誹謗中傷的なコメントがアーティストの目につく可能性は高い。実際に、流れるコメントを目にして涙を流すアイドルの映像が数多く残っている。

ファンによる広告

韓国では、アーティストの誕生日などにファンがお金を出し合い、電光掲示板を備えたトラックを走らせる、コーヒーカーを出店する、看板を掲示するといった事が一般的に行われる。これらは主にファンによりポジティブな活動として行われるが、アンチによる悪用も散見される。

空港等での直接交流

国内外への移動が多いK-POPアーティストは、出待ちするファンによる写真撮影が行われることも多い。韓国国内では出待ち自体は禁止されていない(暗黙の了解)となっているが。身体接触や執拗な写真撮影が問題視されることもあるほか、空港職員や関係者によるフライト情報の流出やパスポートの盗撮被害が発生している。

最近の例

  • 女性アイドルが俳優と交際していることが報じられると、SNS上では交際に対して非難の声が上がり、公道に事務所との契約解除を求めるトラックが登場した。本人は「応援してくれたファンをがっかりさせた」としてSNS上で直筆の謝罪メッセージを掲載した。この問題はイギリスの公共放送「BBC」のニュースサイトでも取り上げられ、「アイドルの私生活」についての考え方の違いが議論を呼んだ。その1か月後、2人の破局が発表されたが、事務所は一連の報道との関連性を明らかにしていない。
  • オンライン上で男性アイドルに対する真偽不明の噂が発生。SNS上での中傷、またグループからの脱退を求めるトラックが登場した。このアイドルの所属事務所は「事実無根」として法的措置をとる旨を発表した。
  • 女性アイドルがライブ配信を実施。その際、殺害を示唆するコメントが書き込まれた。メンバーその場で反論、その後所属事務所が悪質なコメントに対しては法的処置を取る旨の声明を発表した。
  • 女性アイドルに対する悪質な虚偽情報を発信し続けたYouTuberへの損害賠償を求めて、アイドル本人とその所属事務所双方がそれぞれ提訴。現在も訴訟が続いている。

上記に挙げたものはあくまで一例だ。アイドルやその関係者に対する殺害予告は日常茶飯事のように起こっており、中には警察が出動する事態に発展するものもある。

所属事務所による対応

上記の問題に対して、所属事務所は様々な対策を講じている。以下は、人気アーティストを多く抱える韓国国内の4大事務所の対応だ。

SMエンターテインメント -通報窓口を設置

BOA、aespa、NCTなどのアーティストが所属する同事務所は、所属アーティストの権益保護のために設置された通報センター「KWANGYA 119」を設置している。アーティストへの誹謗中傷やフェイクニュースに対する被害をファンが直接報告でき、それらについて職員が対応を返信する仕組みとなっており、現在まで累計23万件超の通報が寄せられている。通報の1部は公開されており、Webサイト上で確認する事ができる。


参考:https://kwangya119.smtown.com/

JYPエンターテイメント – 法的措置を発表

TwiceやStrayKidsなどのアーティストが所属するJYPエンターテイメント(JYPE)は最近、特定のグループに対する誹謗中傷や虚偽情報の拡散を受け、声明と共に、すでに法的対応に着手したことを発表した。その他、こうした行為に対するファンからの積極的な情報提供を呼びかけている。

アーティストの権利侵害に関する法的対応のご案内
2024-03-14
こんにちは、JYPEです。

現在、SNSやオンラインコミュニティなどに掲載・拡散されているアーティストの権利を侵害する誹謗中傷、虚偽事実の書き込みに関する法的対応の進行状況をご案内いたします。

弊社は、アーティストに対する悪意のある誹謗中傷、名誉毀損、虚偽の事実記載など、悪質な掲示物を掲示及び流布した者の資料を綿密に確保しており、専門法務法人と一緒に利用可能な法的対応を進行中です。

悪質な投稿の掲示及び流布でアーティストの権益を侵害する行為は、明らかな違法行為であり、当社は先처や合意なしに強力に法的対応することをお知らせいたします。

また、アーティストに対する悪質な投稿の収集と法的対応は定期的に行われており、関連ファンの皆様の関心と積極的な通報をお願いいたします。(fan@jype.com)

<中略>

ありがとうございます。

引用:JYP ENTERTAINMENT 公式ホームページ

YGエンターテイメント – 「ファンエチケットキャンペーン」を実施

YG Entertainmentは、「ファンエチケットキャンペーン」と題し、オンライン上だけでなく、アーティストのプライベート侵害にも言及した上で、所属アーティストへの危害に対して毅然とした対応を取ることを明らかにしている。

こんにちは、YG ENTERTAINMENTです。

平素より弊社の所属アーティストを応援していただき、誠にありがとうございます。

健全なファン文化づくりに向けて「ファンエチケット」キャンペーンを行いますので、ファンの皆様にはご協力賜りますようお願い申し上げます。

1. アーティストのプライベートな空間(宿舎、練習室など)に無断で訪ねたり侵入する行為、非公式なスケジュールの場所を訪れることはご遠慮ください。

2. アーティストの個人情報や告知していないスケジュール情報を開示したり、対価を得て取引する行為は違法です。これらの行為を見つけた場合、弊社にご報告ください。(Eメール:withygfan@ygmail.net)

3. アーティスト本人や家族、または知り合いの個人情報を取得し、繰り返し電話やメール、メッセージなどで連絡したり、押しかけたりするなどのストーカー行為はご遠慮ください。

4. 移動するアーティストの車を追いかけたり、アーティストの体を触ろうとしたり、移動を妨げる行為は事故にもつながりますのでご遠慮ください。
現場ではスタッフの案内に従っていただけますよう、ご協力をお願いいたします。

5. 虚偽の風説や根拠のない話で悪質な噂を流布する行為や誹謗中傷、セクハラ、悪質な書き込みは固くご遠慮願います。

弊社は継続的に悪質な投稿をモニタリングし、積極的に法的措置を取らせていただきます。
弊社は健全なファン文化づくりや所属アーティストの人格と権利、名誉を守ると共にアーティストとしての成長と発展を支えるための支援を行い、最善を尽くして参ります。

何卒ご協力の程、よろしくお願いいたします。

引用:YG ENTERTAINMENT 公式ホームページ

HYBE – 社内診療所を開設

BTSやNewJeansを擁するHYBEは、今年に入り医師と看護師が常駐する社内診療所の開設を発表した。韓国のエンターテイメント業界では初となるこの試みは、アーティストとデビューを目指す練習生も含む全社員が対象となり、精神医療を専門とする医師のもと心身のケアを社内で行える医療体制を構築した。

HYBEのプレスリリースでは開設の経緯について、「世界的なK-POPトレンドを主導するメンバーとアーティストの健康を体系的に管理し、最終的に産業の持続的な成長を続けるという意志を込めた」と説明されている。

求められるファンの自浄作用

こうした話題で標的とされるアーティストの多くは10代前半〜20代の若者たちだ。韓国大手事務所HYBE傘下のレーベルであるADORは、所属アーティストを巡る憶測と噂の流布について「メンバーが芸能活動と日常生活の全領域にわたって、人生で重要な学びと成長の時期を迎えているという点を何よりも重要視しています。」とコメントしているが、上記に挙げられたような誹謗中傷は、成長期のアーティストに精神的な苦痛を引き起こし、場合によっては命を落とす事態にもつながる。

オンラインでの誹謗中傷の発生を未然に防ぐことは難しい。事務所による対応が後手に回ってしまうことも多く、一度世に放たれた投稿をすべて削除することはほぼ不可能と言って良いだろう。こうした中で見られるのが、ファンによる「善意の上書き」だ。例えば、アーティストを中傷する意味合いで作られたハッシュタグを利用し暖かいメッセージをたくさん投稿する、非難の言葉で溢れたSNSのコメント欄をたくさんの応援の言葉でかき消すなど、自分の愛するアーティストを守ろうと行動するファンが数多く存在していることは述べておきたい。

K-POP市場の輝かしい成長に呼応するかのように増え続けるアンチ。問題解決への模索は今後も続いていく。

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