誹謗中傷、ネットいじめ、リベンジポルノ…。増え続けるインターネット上のトラブル。最近ではAI技術がより身近になったことにより、ディープフェイクによる誤情報の拡散など新たな嫌がらせの手段が生まれた。
オンライン上で発生するこれらの嫌がらせを、海外ではひとまとめに「オンラインハラスメント」と表現することがある。今回は「オンラインハラスメント」の言葉と定義、その種類について紹介していく。
- オンラインハラスメントの定義
- オンラインハラスメントの特徴
- オンラインハラスメントの種類
- 誹謗中傷(Online slander)
- ネットストーカー(Cyberstalking)
- ヘイトスピーチ(Hate speech)
- なりすまし(Online impersonation)
- 晒し行為(Doxing)
- 虚偽通報(Swatting)
- リベンジポルノ(Revenge Porn)
- セクストーション(Sextortion)
- アストロ・ターフィング/自作自演(Astroturfing)
- ハッシュタグ・ハイジャック(Hashtag hijacking)
- 懸念風荒らし(Concern Trolling)
- ドッグパイリング(Dogpiling)
- ディープフェイク(Deepfake)
- ドッグホイッスル(Dog-Whistle)
- サイバーモブ(Cyber Mob Attack)
- DoS攻撃/DDoS攻撃(DoS Attack/DDoS Attack)
- 大量メッセージ攻撃(Message Bombing)
- 悪質な行動は相談を
オンラインハラスメントの定義
アメリカの法律事務所「BLS」は、ハラスメント(Harassment)という言葉の定義を「対象となる個人を怖がらせたり、傷つけたり、怒らせたり、恥をかかせたりすることを意図した、継続的な行動」とし、次いでオンライン・ハラスメント(Online harassment)を「SNS、メールやメッセージサービス、ゲームプラットフォーム、携帯電話通信などのデジタル技術を使用してこれらの行為が行われること」と定義している。
上記の定義に照らし合わせると、オンライン上で行われる嫌がらせは全てオンラインハラスメントに該当する。従って、セクシャルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)がオンライン上で行われた場合、それはセクハラまたはパワハラであり、オンラインハラスメントでもあるということだ。
オンラインハラスメントの特徴
容疑者の特定が難しい
オンラインハラスメントの特徴のひとつに「匿名性」がある。対面で行われるハラスメントとは異なり、加害者の特定が困難であり、不特定多数の人間から攻撃を受ける可能性がある点が、オンラインでの嫌がらせ行為の特有の問題だ。無論、対面でもハラスメントであっても許されるべきものではなく、被害者が受ける苦痛に大小はないが、相手がわからないという恐怖が、被害者に大きな精神的苦痛を与えることになる。
テクノロジーを駆使した嫌がらせ
オンラインハラスメントには、個人への嫌がらせを目的としたSNSアカウントの乗っ取り行為やディープフェイクを使用したなりすまし行為など、専門性を駆使した攻撃も該当する。
対照的に、オンライン上での誹謗中傷や脅迫行為は、SNSやチャットツールのアカウントさえあれば、小学生であっても実行できてしまう。その手軽さと、前述した匿名性が相まって、年代を問わずトラブルが後を絶たない。
オンラインハラスメントの種類
上記を踏まえて、オンラインハラスメントにはどのようなものがあるかを紹介していく。
誹謗中傷(Online slander)
誹謗中傷は対面であっても行われる行為だが、ここでは主にSNS上で行われる悪口・名誉毀損を目的とした行為を「誹謗中傷(またはオンライン上での誹謗中傷)」という。特定の個人に対して暴力的なメッセージを送信したり、名誉を毀損するような発言をすることがこれにあたる。
ネットストーカー(Cyberstalking)
特定個人を対象とし、そのプライバシーを侵害するために継続した監視、脅迫、中傷を繰り返し対象者に恐怖や不安を抱かせること。対象者への連続したメッセージの送信や居場所の特定なども該当する。
ヘイトスピーチ(Hate speech)
SNSなどで、人種、宗教、性的指向、ジェンダーなど、特定の属性を持つ個人または集団に対して差別的、攻撃的な言動を行うこと。文章だけでなく、こうした属性を侮辱するような画像や動画を発信することも含む。
なりすまし(Online impersonation)
実在する特定の人物または職業の人間を騙り、当人の名誉を傷つけること、または偽の情報を発信することをいう。医師のふりをして偽の医療情報を流したり、誰かになりすまして第3者へ誹謗中傷を行うなどの行為がある。
晒し行為(Doxing)
嫌がらせを目的として、住所や電話番号などの個人情報を本人に無断でオンライン上で公開すること。恐喝や脅迫行為につながる危険のあるプライバシー侵害行為。英語圏ではこうした晒し行為はドキシング(Doxing/Doxxing)と呼ばれる。
虚偽通報(Swatting)
警察等の法的機関に対して、対象者が犯罪行為をしているなど虚偽の通報を行うこと。英語の名称「Swatting」はアメリカの特殊部隊(SWAT)を動員させることから来ている。公務執行妨害に当たる犯罪行為。
リベンジポルノ(Revenge Porn)
主に過去の配偶者やパートナーの性的な写真や画像を、本人の同意なしにオンライン上で拡散する行為。
セクストーション(Sextortion)
対象者から何らかの手段で入手した性的な写真や画像を「オンライン上に流出させる」などと脅迫し金銭等をゆする行為。
アストロ・ターフィング/自作自演(Astroturfing)
特定の思想や運動を広めることを目指す少数の人間が複数のアカウントを作成・発信し、あたかも大量の人間がその思想を支持するかのように見せかけること。自作自演行為。Astroturfはアメリカの人工芝メーカー。
ハッシュタグ・ハイジャック(Hashtag hijacking)
ハッシュタグを、本来の意味と無関係または反対の内容の投稿に付けて使用すること。「#〇〇に賛成」というタグを付けた状態で反対意見を投稿するなど、本来の意味をかき消す目的で使用されることが多い。
懸念風荒らし(Concern Trolling)
ファンや賛同者を装った荒らし行為のこと。
例)「〇〇の使用方法」という議論に参加し「〇〇を使用した友人が病気になった」などの真偽不明の情報を流し、反対意見や不安を植え付ける行為を指す。
ドッグパイリング(Dogpiling)
SNS上の1つの投稿または1ユーザーに対して、多数のアカウントが協調して否定的な反応を示すこと。Dogpileは「大勢の人が飛びかかって組み伏せる」という意味の俗語。
ディープフェイク(Deepfake)
AIで実在の人物の顔や声を偽造し、存在しない映像や画像を本当にあったことのように発信すること。主に政治家や芸能人の発言・行動を捏造する時に使用されることが多い。
ドッグホイッスル(Dog-Whistle)
規約違反にならない言葉やシンボルを、身内や限られたコミュニティのみで通用する意味を持たせて使用すること。独自の用語を使用すること自体に問題はないが、中傷・差別的な意味合いでの使用が問題視される。
サイバーモブ(Cyber Mob Attack)
大規模な集団が、集団で標的を辱めたり、嫌がらせをしたり、脅したり、信用を失墜させようとする行為。過去には、自身のファンを扇動しイベントへのテロを呼びかけたとして、人気オンラインゲームがYouTuberを訴えるという事件があった。
DoS攻撃/DDoS攻撃(DoS Attack/DDoS Attack)
WebサイトやWebサービスに大量のアクセスを行い、サービス提供を妨害する手法。1箇所から発生する攻撃をDoS攻撃、複数箇所から発生する攻撃をDDoS攻撃と呼ぶ。攻撃により、サービスの遅延や一時的な停止が発生し、被害者のサービスやビジネスに深刻な影響を与える。
大量メッセージ攻撃(Message Bombing)
個人や組織のアカウントやメールアドレスに大量のメッセージを送る攻撃。SNSやチャットツールの不審検知システムを逆手にとり、被害者のアカウントを一時停止やBanなどの機能不全に陥らせることが目的。
悪質な行動は相談を
上記に挙げたオンラインハラスメント行為は現時点で呼び名が付けられているものに過ぎず、現在も様々な手口が登場している。オンライン上で不快な行為に遭遇した、目撃したという場合は1人で抱え込まず、サービス提供元への通報や警察などへ相談をしてほしい。
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