ハーバード大学が公衆衛生従事者向けの「デジタルヘルスキット」を公開。コロナ禍での誹謗中傷の増加がきっかけ

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ハーバード大学公衆衛生大学院のヘルスコミュニケーションセンター(CHC)は1月31日、公衆衛生従事者や研究者へ向けた資料「デジタルヘルスキット」を公開した。

このキットは、医療従事者が受けるオンライン攻撃への対策をまとめたもの。新型コロナウイルスのパンデミックにより、公衆衛生従事者への誹謗中傷は増加した。2020年3月から2021年1月に行われた調査では、アメリカの地方保健職員への嫌がらせや脅迫は1,499件に昇った。ソーシャルメディア上では誹謗中傷の他、Doxing(ドキシング・個人情報を晒し上げる行為)や武力行使をほのめかす脅迫行為も目立ち、離職者222人のうち36%が離職理由にハラスメントを上げていた。

このような脅威は、ワクチン接種やマスク着用など、新型コロナウイルス感染症の安全対策に不平を持つ人々から向けられたものが多く、そのほか人工中絶やトランスジェンダー医療に関わる人々への嫌がらせも報道されている。

オンライン攻撃への現実的かつ具体的な対策

「デジタルヘルスキット」は「問題の認識」「対処」「自己防衛」「組織単位での対処方法」の4章で構成されている。

第一章では対象に対してネット上で攻撃を行うネットいじめ(Cyberbullying)や、AIで実際の映像を加工するなどして、誤った情報が実際に配信されたかのように誤解させるディープフェイク(DeepFake・フェイクAIとも)など、どのようなものがオンライン攻撃に該当するかが説明されている。

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第二章では、こうした攻撃に対する対処法として、攻撃的なアカウントの通報、アカウントの安全性の確認といった対処方法が記載されている。印象的なのは、対策の1番目に「自分の優先順位を見直す。あなたにとって、オンライン上で注目を集めることはどれほど重要か、オンライン、オフラインでの行動を見直す意思はあるか?」と記載されていることだ。攻撃をする側が悪いのは言うまでもないが、自らの行動を振り返り、果たして本当に発信を続ける必要があるのかを考える、という現実的なアプローチが提示されている。

第三章は、より具体的かつ踏み込んだ自己防衛の方法が提示されている。例えば、「アカウントの乗っ取りに備えてパスワードを複雑にする」というのはよく知られた保護方法だが、このガイドではもう少し踏み込んで「パスワードを忘れた際の質問は、SNS投稿で回答がわかってしまう可能性があるため偽の解答を入力する」「乗っ取りにあった場合に備えて、DMやプライベート投稿は半年おきに削除する」といったものだ。

そして最終章では、多要素認証やデータ削除サービスの導入など、組織単位でのオンライン攻撃対策といった技術面での対策から、職員・生徒に対してのSNS上での振る舞いの研修の実施、緊急時のポリシーの策定などの本質的な対策が紹介されている。

いずれの章も公衆衛生従事者に限らず、多くの人々の参考になる資料だ。閲覧・ダウンロードは、ハーバード大学公衆衛生大学院のホームページ Digital Safety Kit for Public Health(英語) から。

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